イーゴリの1日

冷たい風がイーゴリのくすんだ金髪を撫で、赤い頬を刺す。手袋もつけていない手はかじかんで、ひび割れだらけだ。朝からずっと寒風に吹かれながら鍬をふるってきた彼の腰は痛みを訴えている。彼より少し年上の、木にもたれて休んでいた男は見張りに怒号を浴びせられている。イーゴリは、手を休めず土を耕し続けた。





太陽が昇る前に起きて、白む空の下、家畜に餌をやりに行く。僅かばかりの家の畑の雑草を刈る。そして、日が昇ったら、管理人どもにどやされないように領主の畑にさっさと向かう。週に三日以上はそうして領主の畑を耕して、残りの日、なんとか家の畑を耕し、作物の世話をする。物心ついてから、初めは両親に連れられて、次は一人で、今は妹を連れて、ずっと繰り返してきたことだ。太陽が東から昇って西に沈むように自然なことで、特に何も疑問に思ったことはなかった。自分たちは先祖が土地を領主や地主たちに奪われてしまったから、彼らに労働と収穫を捧げなければならないのだ。きっとずっと、そうして領主のために働き、家族を持ったら家族と一緒に領主や皇帝の富となる作物や家畜を育て、自分たちの命をなんとかつなぐ生活が続くのだろう。それでも、土地を全く持たない奴隷に比べればマシなものだ。鎌を振るって麦を刈り続けるのに疲れると、領主の工場で働く労働者たちが羨ましく思える時もある。しかし自分で働く時間も決められない彼らの生活もいいものではない。彼らは奴隷でなくとも家畜も耕地も持っておらず、それで大きな小屋の中で織物を織ったりするのだ。肉体的に辛くとも陽の下で、風に吹かれながら仕事をする方がいいと思った。





日が沈み、空が青暗くなる頃、ようやくイーゴリたちは今日の務めから解放された。ずっと土を耕したり、重い土を運ばされていた彼らは腰も足も疲労で痛む。しかし領主の畑の管理人がいる手前、彼らは誰の悪口も言わず、口減らずな者や年老いた者が体の痛みを訴えるぐらいだ。勿論、非情な管理人は聞く耳持たない。イーゴリは何も言わず、管理人に挨拶をした後、幼い妹を探し出し、帰路へ向かった。妹はまだ5歳だが、雑草むしりのような軽い仕事をしていた。それというのも、イーゴリの父も母も賦役に来られない理由があったからで、イーゴリ自身も本当はようやく賦役に適格になるはずの年齢だったが、10年以上前から既に賦役を担っていた。流石に十より下の子供は少ないが、イーゴリより少し歳下の子供たちは何人も畑で働いていた。流行病や怪我でよく人の死ぬこの地では珍しいことではない、と彼らは思っていた。もっとも、イーゴリは生まれてからずっとこの領地で暮らしているので、他の事情は知らなかったが。



「今日は粥カーシャに豆以外も入っているとといいな。」

「そうだね、イーゴリ。」



家までの長い道のり、兄妹が交わした会話は一言だけだった。兄と違って鳶色の髪の妹は、兄とよく似た無表情を浮かべていた。

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